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正義を問うラノベ「リンドウにさよならを」の感想・書評

投稿日:


ファミ通文庫より発売「リンドウにさよならを」

 

 

 

こんにちは。となりです!

 

米国が北朝鮮に対して宣戦布告をしたとか、日米海軍が合同演習したという、なんとも物々しい話が世間の不安を増長させている……ということですが、一体僕らはどうなっていくんでしょうか。

一小市民としては、戦々恐々とする他ありません。

 

だから、とりあえず! ラノベの書評をするぜ!

……こういうのが、駄目な日本人の見本かもしれませんね。

こうならないように、この記事を読んでいただいている諸兄におかれましては、各国の情勢にはある程度気を配るようにしましょうー。

 

さて、今回は一週間ぶりぐらいにラノベの書評となります。

作品は「リンドウにさよならを」となります。

 

前回と同じく、ネタバレ無し(読んでない人向け)の感想と、ネタバレ有り(読んだ人向け)の感想で分かれてます。

前半はネタバレ無しの感想になってますので、安心して読んで下さい。

後半に大見出しで、ネタバレ注意と表示されたら、まだ読んでない方はブラウザバックしてくださいね。

それではよろしくお願いしますー。

 

「リンドウにさよならを」の基本情報

 

  • タイトル:リンドウにさよならを
  • 出版社:ファミ通文庫
  • 著者:三田千恵
  • 画:DANGMILL
  • ジャンル:生きる価値を問う学園青春ストーリー
  • 発行日:2017/01/30

あらすじ

 

想いを寄せていた少女、襟仁遥人の代わりに死んでしまったらしい神田幸久。三年後、自由かつ退屈な日々を過ごす地縛霊として目覚めた彼は、クラスでいじめに遭う穂積美咲にだけ存在を気づかれ、友達になることに。一緒に過ごす内に美咲の愛らしさを知った幸久は、イメチェンを勧め彼女を孤独から解放しようと試みる。少しずつ変わり始める美咲の境遇。それがやがて、幸久が学校に留まる真実に結びついていく——。

出典:第18回えんため受賞作プレ特集!サイト

 

点数

 

  • テーマ:7
  • ストーリー:7
  • キャラクター:7
  • 文章:7
  • 総合評価:7

 

『リンドウにさよならを』評価(ネタバレ無し・まだ読んでない人向け)

『リンドウにさよならを』の良かった点

この作品のいいところ。それはなんと言っても、ノスタルジーを感じさせてくれるところにある。

普通、こういった青春劇というのは同年代に向けた描写や文体に設定になっているわけだけど、この作品では、主人公が地縛霊という設定を活かして、学校生活を送る若人たちを俯瞰するような立ち位置から始まる。

それは、ある種、もう手に入ることのない学校生活というものに憧憬にも似た感情を抱き、空想の世界での学校生活に想いを馳せる僕のような人間には、非常に共感性が高いと思う。

また、文体もラノベらしく無い。

無闇矢鱈と装飾された言葉は無く、かといって難読漢字が多用されているわけでもない、丁度いい塩梅。

一般文芸の棚に並んでいても不思議ではないと思う。

ストーリーは、恋慕していた少女の代わりとなって亡くなってしまい、とある学校の地縛霊となってしまった少年・神田幸久が、クラス内で虐められている少女・穂積美咲と友達になることから始まるわけだけど、幸久が亡くなる原因となった襟仁遥人が非常に重要なキャラクターとなっており、物語の半分以上は彼女をスポットしたものになっている。

上記の3人の関係は複雑なものになっており、ページを捲るごとに明かされる関係には胸を掴まれたような気持ちになった。

全てが高品質にまとめられた、まさに万人にオススメできる王道青春小説だと思う。

『リンドウにさよならを』の悪かった点

良かった点で王道小説だと言っているが、裏を返せばある程度ありきたりな面というのは否めない。

勿論王道展開を非難する気は毛頭ない。

ただ、察しの良い読者であれば、物語中盤でだいたいの関係性というのが見えてきて、終盤で謎が明かされる頃には少し肩透かしを食らう可能性はあると思う。

また、王道ならではのツッコミどころも存在する。

ようはご都合主義ということで、キャラクターたちの言動のタイミングが、物語を動かすために「言わされている」と感じてしまう描写があったりする。

また、とあるキャラクターの信念が物語の根源を担っていると言っても問題ないわけだけど、この信念を共感できるか出来ないかで作品の評価がまるっきり変わってしまうと思う。

別にその信念が悪辣なものであるとかそういうわけではないが、理解できない人は理解できないものであるということなので注意してほしいかもしれない。

総評

非常にストーリー、キャラクター、文章と、高いレベルにまとまった作品で、名作という判を押しても問題ないほどの出来だと思う。

悪かった点で、とあるキャラクターの信念について書いているけど、往々にしてキャラクターの信念にどれだけ共感できるかなんて十人十色なので、合う人合わない人はいると思うので、青く瑞々しい青春物語や、死生観について考えさせられる小説に興味があるという人はとりあえず読んでみてもいいかもしれない。

一人称で進む物語ではあるが、地縛霊という設定上、ある程度落ち着いた主人公なので若い読者でなくても問題もないし、もしあの頃学校生活がこんな感じであれば……と思いながら読むのもいいかもしれない。

 

『リンドウにさよならを』評価(※ネタバレ有り・もう読んだ人向け)

 

正しさの狂人

この小説を読み終わった時、一番最初に思ったのは、襟仁遥人という人物は「正しさの狂人」であるという評価だった。

どれだけ非道なことされようが他人と価値観が合わなかろうが、本当の意味での孤高を貫いてきた襟仁だったけど、自分の中で定めているルールを破ってしまった瞬間、張り詰めていた糸が切れたかのように、彼女が最も忌避してきた自殺という選択肢をとった。

松下香苗の母が犯した罪は、非難されるべきものであったし、娘も深層的には母がやったことを悪いことだと理解していた。つまり、襟仁の為したことは決して間違いではなかった。

しかし、襟仁は正しさという名の純白の沼地に足を取られる。

絶対的に正しくあろうというのが、襟仁の挟持だったわけだが、自分の行為によって絶対の正しさなどは無いというのを証明してしまったわけだ。

 

これは破滅的なまでのアイデンティティークライシスに繋がる。

自分を形成し、自我を保ってきたものが一気に瓦解するのだから、その恐ろしさは計り知れない。

だからこそ、正義という言葉に異常なほど拘ってきた襟仁は、正しさの狂人となって自殺してしまった。

 

そしてこの襟仁が語る正しさに共感できるかできないかで、作品への評価はがらりと変わる気がする。

僕は彼女の語る正しさに感じ入るものがあったからこそ、作品自体にも高評価を下しているけど、共感できなかった人にとっては、納得出来ない結末なのかもしれないと思った。

正直物足りなかった部分

少し残念だなーと思っているのが、幸久の弟のような存在である守が、幸久に対してまだ幸久が生きているという真実を語る部分。

結論から言えば「もっと早く言えよ!」という一点に尽きる。

事実を告げることによって精神状態に変調をきたすことを恐れていたなどの一節があるだけでも、まだ納得出来たと思うが、残念なことに書いていなかったことによって、作者が結末を迎えるために守に真実を吐かせたというように読めてしまった。

何故言わなかったのかについてはもっと練ってほしかったかもしれない。

後、幸久と襟仁の会話を挿れてほしかったかもしれない。

幸久の精一杯の感謝を込めた「さよなら」と、ひらひらと宙を舞うリンドウが、幸久と襟仁の最期の逢瀬を表していたのかもしれないしそれ自体は良かったのだが、その前に幸久が霊体から実体へと戻る際に、幸久と襟仁が会話をして襟仁が別れ際に告白するシーンがほしいと思ったのは僕だけだろうか。

まぁ僕は襟仁贔屓だと思うので、冗長になると言われるとその通りかもしれないけど。

この手の小説への売り文句に言いたいこと

帯などでよく見かける「泣ける」「号泣」のような売り文句は、こういう素晴らしい小説を陳腐に見せてしまうと思うので是非ともやめてほしい。

そりゃ本を売ることのプロである編集者たちがやっているので、「泣ける」とか書いておけば一定層が簡単に釣れるのかもしれないが、その裏側で確かに購入意欲を削がれている人間がいることは知ってほしいと思った。

さいごに

僕は、こういったビターエンドが好きな人間なので、必然的に、この『リンドウにさよならを』は好きな作品の一つとなった。

どこまでいっても襟仁の小説である本作は、襟仁のための一作であるといっても過言でもない。

美咲も勿論好きだが、やっぱり襟仁へ感じた圧倒的な憧憬を忘れることは出来ない。

襟仁というキャラクターを産み出してくれた作者に敬意を表して今回の書評を締めたいと思います。

読んでくれてありがとうございました。

-ラノベ
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