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忘却とはそれ即ち消滅。『終わる世界の片隅でまた君に恋をする』の考察・感想・書評

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『終わる世界の片隅でまた君に恋をする』の考察・感想・書評

 

おっす、となりです。

クーラーと扇風機で、PC周りに冷風を送らないといけないぐらいに暑いですね。

誰だこの熱帯雨林みたいな暑さを撒き散らしておるのわ。

責任者がいたら電気代請求したい。

 

まぁそんなからっとという表現を通り越して、半ば溶けそうなぐらい暑いこの夏にオススメしたいライトノベル。

それが『終わる世界の片隅でまた君に恋をする』です。

 

早速感想を載せていきますー。

 

基本情報

  • タイトル:終わる世界の片隅で、また君に恋をする
  • 出版社:電撃文庫
  • 著者:五十嵐雄策
  • 発売日:2017年5月10日

あらすじ

 それは、いつからだったろう。
この世界に奇妙な現象が起こり始めた。人が、その名前も、周囲の人たちとの関係も、そしてその存在すらも、全てを忘れ去られてしまう。忘れられて、誰の記憶からも消えてしまうのだ――。

――忘却病。

いつしかその現象は、そんな名前で呼ばれるようになった。全ての人が全ての人を忘れたとき、それが世界の終わりになるのだろうか……。それに抗うかのように、僕は保健室登校の桜良先輩と、忘却病に罹った人の最後の望みを叶える『忘却病相談部』を始めることになったのだが――。

出典:電撃文庫サイト

『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』をまだ読んでない人向け書評

まずはお決まりの作者情報から行きましょう。

著者の五十嵐雄策先生は二度のTvアニメ化を果たしている『乃木坂春香の秘密』シリーズも執筆されているということで、作者買いしたわーって人も多いはず。

 

乃木坂春香の秘密 ぴゅあれっつぁ♪ Blu-ray BOX <初回限定生産>

 

イラストのぶーた先生は実写化もするらしい『二度めの夏、二度と会えない君』のイラストも手がけており、今青春系ストーリーのラノベを出すなら、この人をつければ! というところもありそうなぐらい人気の方だと思う。

 

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

 

そんな人気作家2名も携わった本作「終わる世界の片隅で、また君に恋をする」は、青春と忘却病に関する物語だと言えるかもしれない。

 

あらすじでも書いてあるけれど、突如として1人の人間が消えてしまい、その個人に関する思い出や関係までも「無かった」ことになる忘却病というものが流行っているのがこの世界の日本だ。

勿論政府などの各国機関も対策に力を入れようとしているが、一度その罹患者が消えてしまえば、消えてしまった罹患者を思い出すのすら難しいという性質上、まったくままならない状況で、まさにタイトルの通り主人公が生きる地球は「終わりゆく世界」になっている。

 

そんな終末が着々と近づく現代世界で、忘却病の兆候が表れた人間の願いを叶える「忘却病相談部」を立ち上げたのが主人公のアキ。

前述した通り、忘却病になんの対策も取れないでいる以上、その兆候として遠い関係性だった人間が自分の忘却していくことで自身が忘却病の罹患者であると悟った者は自分消える……つまり余命宣告されたも同然だ。そうすれば「死ぬまでにやっておきたい事」という願いが湧くのが当然だ。

 

その「死ぬまでにやっておきたい事」という願いを叶えるのが忘却病相談部なのである。

この小説の肝。それは「忘却」への恐怖

この小説の肝は何かと聞かれた時、僕が言いたいのは副題の通りだ。

 

忘却病というのは恐ろしい病気で、罹患者はおよそ1〜2週間で、言葉通りに”消えて”しまう。

消えてしまった人間にまつわる思い出は、どんなに親しい者……つまり親でも兄弟でも親友からでも消えてしまう。つまり存在自体が無くなってしまうわけだ。

それは真実、恐ろしいことだと思う。

 

僕たちが普段親しくしている、親類縁者や友人知人が、自分がいたことすら覚えていない状況。

要は”いなかった”ことになるのと等しい。

 

その恐怖を、この『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』では、恋心や友情まで消えてしまうということで表現している。

 

オススメしたい人たち

舞台設定上、こういったジャンルの小説に聡く無い人でも、主要人物が消えてしまうことは想像に難くないと思うし、僕も読む前に消えてしまうんだろうなと想像した。

 

問題はそこから消えてしまった大事な人が還ってくるのか。または――というのが、気になるところだと思うが、これを説明してしまうと盛大なネタバレになってしまうので、問題にしている部分に関しては明言を避ける。

 

ただ「著者はこういった人に向けて小説を書いてるのかな」と邪推しちゃったので、書いておきたいのは、終わってしまう世界の片隅で起きている、ほとんどの人にとってはちっぽけで、彼らと読者にとっては大きな物語を読みたい! と思うならオススメ。

ちょっとごまかし方は、自分でもどうなんだろう……って思うけど、まぁネタバレ抜きで行くならこれが正解だと思う。

 

普通の高校生である主人公が介入できるのは、「忘却病相談部」に持ち込まれる個人間での問題だけで、それこそ国家レベルや企業レベルで起きている問題などが描写されることはない。

個人間で起きた問題で、登場人物の繊細な心情がずっと綴られていく小説が好きだという人で、この設定に興味がある人は間違いなくハマるタイプの小説だろう。

 

『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』をもう読んだ人向けの感想・考察

僕は、五十嵐雄策先生の小説を『乃木坂春香の秘密』シリーズぐらいしか触れたことがなくて、最初に本作を読み終わって時に大層驚いた。

――こんなに疼痛を引き起こすような小説を書ける人なんだなぁと。

 

いやまぁ失礼かもしれないけど、僕はなだたる声優陣(能登麻美子とか後藤麻衣とか生天目仁美とか能登麻美子とか能登麻美子とか)が出ている『乃木坂春香の秘密』シリーズのアニメが好きで、今でもたまにキャラソンとかを聞いたりするぐらいだったので、ギャップで驚いたわけだ。

先程イラストのぶーた先生が携わっていることで紹介した名作青春小説『二度めの夏、二度と会えない君』だって、著者の赤城大空先生は『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』という、タイトルからして”ヤバそう”な作品を書いてるわけで、ラノベ作家というのは非常に懐が広いことを再度実感した。

……冷静になってみるとやばいよね。『下セカ』の作者が若者に大受けして実写映画化する青春劇書いてるって。

 

まぁそんなギャップに驚かされた本作だけど、売れっ子作家ということもあって構成が憎らしいぐらいに上手い。

読者が思わず頭を抱えて「あ~っ、ここで忘却病をそう活かしてくるなんてズルいー!!」ってなる場面が目白押しだった。

 

家族計画はマズいですよ!

 

いきなり同い年の女の子を妹になって、気になる先輩も特典のように姉になる展開とか臭い。その気持ちは、分かりすぎちゃうぐらいに分かる。

……でも感じちゃう。

 

2章だったかな?

春川千紗ちゃんという女の子が、自分に忘却病の兆候があることを認めて「家族になってほしい」と依頼してくるわけだけど、この千紗ちゃんがなんとも複雑な身の上で、母が死んでしまい、父とは音信不通。親戚の家をたらい回しにされていた。

いやまぁ確かに父親は親権放棄してるのかよ。一度も連絡無かったようなことが書いてあったことが覚えにあるけど、それは日本の法律上可能なの? とか謎に感じたけど、なんだんかんだん言って父ちゃん母ちゃんの話になると弱い。

それに忘却病の設定がついてくると更に思うところがあるわけで。

父ちゃんが千紗ちゃんのことをあえて忘れたふりをしていたのは分かってたけど、ぐっときちゃったという。

 

後3LDKの部屋が、母の遺産とバイトで借りれるぐらいに不動産価格が暴落しているということは、忘却病によって減っている人口は凄まじいらしい。

なぜ忘却病が発生しているのか、そもそも発生源とは何なのか……という部分も気になったところだった。

幼馴染の麻衣に関して

まぁ触れずはいられないよね。

 

まずは麻衣について書いていきましょう。

日比野麻衣。オーソドックスな、自分には勿体無いと思ってしまうほどに人格者で可愛らしく、それでいて自分に固執してくれる幼馴染。

まぁ理想だよね。これこそラノベ。最高ってのはこの関係性にこそ使うべきでしょうね。

 

まぁそんな麻衣なんだけど………………

 

ちょっと扱い悪すぎない!?

 

僕は、ラストに声をかけてきた麻衣の姿を思い、今なお語り継がれる岡本倫先生の名作『エルフェンリート』のユカを思い出しました。

 

仕方ないんだけどね? こういう物語の都合上、救済は必要だというのは分かるんですけどね? ただ、あまりにも登場シーンが少なくて、救済装置に見えちゃったよ……でも好きなんだよなーこういうキャラクター。

 

咲良先輩

 

麻衣が好きだと言ったな。

 

――でもな。

 

咲良先輩のほうがもっと好きだ。

 

というかこんなの咲良先輩以外選べないんだよなぁ。

卑怯だよなぁ。咲良先輩。

 

保健室・何故か無尽蔵にある娯楽費・創部を考えた咲良先輩じゃなくて、アキが部長だということ……と、思いつくだけでもあるわあるわと、フラグの山だった。

こんなの、咲良先輩自身が忘却病でした展開になりますよって予告してるようなもんだ。

 

基本的にお姉さんが好きな僕は、咲良先輩みたいな主人公をいじくって好意を示してくる娘に弱いわけだけど、やっぱりその性癖は彼女にも適用された。

それでもって、もうすぐ消えてしまうから海に行きましょうというのだから、実に僕好みだ。

終末に身に置かれるなら、最後は海がいいです(真顔)。

 

ということで、僕の趣味に合わせて書いたのってぐらい好みの展開が続いてからの、このラストである。

冒頭、疼痛を感じたと書いたけど、感じた場面というのはラストの手紙のシーンというわけだ。

 

正直なところ、アキには咲良先輩の想いをずっと抱えて生きていてほしいとすら思う。

よく言うじゃない。男の恋は別名保存って。

結局そういうことで、男にとっての初恋は、後の最良の恋すらも塗り替えれないところありますからね。

まぁそういう考え方が根底にあるからこそ、まるで救済措置のようになってしまった麻衣のことがどうしても気になってしまうんだけど。

 

罪な女性でした、咲良先輩。

 

まとめ

総括すると、忘却病という、天災にも近い流行病に登場人物も読者も流された帰結となったと思いました。

 

こうなってくるのはやっぱり次巻はあるのかなーという。

 

読めば分かると思うけれど、やっぱり構成力に一際長けているイメージがある五十嵐先生なので、ラストも次を匂わすような形だった。

 

タイトルの「また君に恋をする」は、1巻時点では忘却病による制作の中でも、夏の願い星、或いは、何かの力によって咲良先輩を思い出したアキの心情を綴っているともとれるし、今後巻数が続いていくのであれば、もしかもしたらアキが忘却病の謎を解き明かして、咲良先輩と再会するのかもしれないとも思えるわけで。

個人的には単巻完結が好ましいけど、忘却病という設定がとてもおもしろいので、気になる部分もあり……とにかく先々を無駄に妄想してしまう。

 

とにかくいい小説だと思います。

 

記事を読んでもらい、ありがとうございました。

-ラノベ

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