MF文庫Jより発売「ぼくたちのリメイク」
ぼくたちのリメイク 十年前に戻ってクリエイターになろう!【電子特典付き】 (MF文庫J)
目次
はい、こんばんわ。
となりです。
最近やっと暖かくなってきましたね。
これだけ暖かいと、植物や生き物が活動的になるだけでなく、変態さんが活動的になったというニュースが流れてきそうです。いくら露出したがったりする変態さんと言えど、寒さには弱いのでしょうか? 変態と言うなら寒さ程度には負けずに、自身の信念を貫き通してほしいところです。
今年はどんな伝説的変態が姿を顕すのか。期待したいと思います。
さて、どうでもいい挨拶も済んだところで早速、「ぼくたちのリメイク」の書評に移りたいと思います。
あ、今回もネタバレが多分にありますのでご注意ください。
それと、今回から読んでない人向けのネタバレ無しの評価と、読んだ人向けのネタバレ有りの評価を別々に書いてあります。
見出しに※ネタバレ注意と書いてあるところからネタバレが含まれますので、まだ読んでいない方は気をつけてください。
MF文庫Jより発売「ぼくたちのリメイク」

僕たちのリメイク_画像
- タイトル:ぼくたちのリメイク
- 出版社:MF文庫J(KADOKAWA)
- 著者:木緒なち
- 画:えれっと
- ジャンル:10年前に戻って芸大ライフを満喫ラブコメ
- 発行日:2017/03/25
あらすじ
僕、橋場恭也は売れないゲームディレクター。
会社は倒産、企画もとん挫して実家に帰ることになる。
輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、
なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた!?
落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、
さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活と突如、バラ色の毎日に!
ここから僕の人生を作り直すんだ———
後の超有名クリエイター(の卵)と共に送る新生活がいま始まる!
と、意気揚々と始めてみたもののそんなにうまくはいかないみたいで……。
点数
前回と同じく点数をつけていきます。
ただ、エンタメの項は排除。他の項目で評価したことを重複しているので意味が無いかな―と。
- テーマ:7
- ストーリー:8
- キャラクター:9
- 文章:5
- 総合評価:7
『ぼくたちのリメイク』評価(※ネタバレ無しです・まだ読んでない人向け)
著:木緒なち先生、イラスト:えれっと先生の『ぼくたちのリメイク 十年前に戻ってクリエイターになろう! 』のデザインを担当いたしました(木緒)@kionachi pic.twitter.com/s8cWVJgpNW
— KOMEWORKS (@KOMEWORKS) March 28, 2017
今回は良かった点、悪かった点、総評という区切りで感想を語っていきたいと思います。
前回のように各項目について語るのもいいかなーと思ったんですけど、読んでない人と読んでる人向けに書きたくなったので今回の方式を採用しました。
良かった点
今回紹介している『ぼくたちのリメイク』を書いておられるのは、美少女ゲーム業界やラノベの装丁なんかでは、とても有名な木緒なち先生。
シナリオライターとしても有名ですし、KOMEWORKSというデザイン事務所ではデザイナーとしてご活躍されています。
そんな木緒先生がこの度執筆された『ぼくたちのリメイク』。
先に引用したあらすじからも分かる通り、売れないゲームディレクターが10年前にタイムスリップして、大阪芸術大学でやり直そうとするお話。
さて、何が良かったと言えば、なんたってヒロインが可愛い。
流石エロゲ業界から到来した黒船。(といっても『妹に僕は手を出すなっ!』という作品で既にラノベデビューはされてますが)
Spriteの『蒼の彼方のフォーリズム』やFrontWingの『グリザイア』シリーズで活躍されてた経歴は、伊達じゃないです。
誰が可愛いかと問われれば、やはり志野亜貴と木暮奈々子のダブルヒロイン。
ロリで、おっぱいがデカく、でもお母さん気質という……ぶっちゃけバブみ力が頂点の女の子。
ギャルっぽいけど、実はすごく真面目で奥手とかいう、オタクの妄想を具現化したような女の子。
読んでて狙ってるなぁ〜。分かってるのに好きになっちゃうなぁ〜と感じること間違い無しのキャラメイク。寮生活というところも、ヒロインたちの素の面を見られる喜びにつながっています。
それから、大阪芸術大学が舞台になっているということで、創作系のシーンや話題が豊富。
最近流行っているので二番煎じ……下手したら十番とか行ってるかもしれないぐらいありふれてますけど、木緒先生の母校でもあるということで、なんだかそこはかとないリアリティがあるんですよね。
悪かった点
ここが悪かった! と、手ひどく言いたくなるような部分が無いからこそ、点数も高めにしているわけですが、悪い部分はそりゃあります。
まず一つは設定の矛盾または不備。
主人公特有の能力で、劇中に起きた問題を解決するというのは、ラノベのみならず様々な作品で求められる要素の一つだと思いますが、その主人公特有の能力に疑問点を抱きました。
解決方法は思わず手を叩きたくなるほどの巧妙さですが、その過程までが残念。終わりよければ全てよしとも言いますが、今ひとつ納得出来ていないところです。
詳しくはネタバレ有りの記事でも語ります。
そしてもう一つが文章が簡素すぎるところ。
これに関しては読む側で差異があることだと思いますが、個人的には満足できませんでした。
勿論セリフ多めのコメディやギャグシーンでの描写はト書きは兎に角簡素に、セリフ回しで……というのはいいと思いますが、シリアスシーンでも心情描写が薄いのはいただけない。
折角一人称だという強みもあるのだから、もうちょっと心情を厚めに描いてほしかったですね。
総評
正直悪かった点を書くのに「どこが悪かったかなぁ……」と、一瞬悩むぐらいには否定する部分が少ない作品だと思っています。
http://bc.mediafactory.jp/bunkoj/remake/
こんな感じの特設サイトもオープンしているところを見ると、ある程度メディアミックスなどが決まっている状態なのではと思っています。
最近、明らかに期待できる作品にはこういう風に広報的な後押しが凄いですもんね。
後、結構なシリアスが1巻からあるので、ダブルヒロインモノとしては欠かせない修羅場も来るんじゃないかなーと予想。
木緒先生は名修羅場の量産機、丸戸文明先生の作品をリスペクトしているとのことなので、是非とも胃薬必須展開を書いてくれることを期待したいです。
個人的には、ライトノベルを読まなくなった20代、30代の人たちにこそオススメしたいなぁ……。
『ぼくたちのリメイク』評価(※ネタバレ注意です・もう読んだ人向け)
各レビューサイト等で話題になっております『ぼくたちのリメイク』主人公、橋場恭也が通うことになったのは十年前の芸大!? 同級生には後の超有名クリエイターたちが! 目立った才能を持たない彼が唯一、特別に持っているのは十年分の経験で——https://t.co/JVSV4rYFG9 pic.twitter.com/yiiEt4yL36
— MF文庫J編集部@毎月25日発売! (@MF_bunkoJ) April 2, 2017
さて、ここからはネタバレ有りの評価となります。
こんなん誰だって奈々子好きになるじゃん?
いやぁ、ずるい。
10年後の別世界線で憧れてた女性が、同じ寮の、同じバイト先で一緒で、当然のように自分と彼女だけの秘密を共有しちゃうのだもの。
そんでもっておっぱいデカくて、ボディタッチ多めなんですから、女性に少なからず複雑な想い抱えているメインターゲット諸君は思わずニッコリですよ。
久しぶりにこの娘はどツボだわっていうキャラクターに出会えました。
まぁ、志野亜紀も可愛いというか、好みなんですけどね。
頭撫でながらあやしてくる描写とか正直クるものがあったって人も少なくないんじゃ無いかな。
1巻から既に名言続出
「ああ。関わるすべての人間が、クリエイターなんだ」
出典:『僕たちのリメイク』1巻227ページ 河瀬川美早紀
正直、このセリフは泣きそうになった。
実は僕自身も似た業界で同じようなポジションに立っていたことがあるけど、とにかく「制作管理」「進行」といった役職や、前面へと出てこない役職というのは、ユーザーやファンから軽視されがちなのは否めないと感じる。
僕だって、業界に入る前、それこそ中学高校時代はライターやイラストレーター……まとめて言えばアーティスト(作家)たちが、クリエイティブの中枢を担う人だ。至高だ……っていう考え方を持っていた。
実際、彼らアーティストたちは名前が前面へと押し出される。
それはおかしなことじゃない。
確かに売れれば、彼らの名を更に箔がつくが、売れなかったり不評だったりすれば、ダイレクトに名が落ちる。
そういうリスクとリターンの秤の上で成り立っているのだから、そこを否定する気は毛頭ない。
だけど、多大な貢献をしているのにも係わらず、日陰の者として生きる人達ってのは少なくない。
音響さんだったり、エンジニアだったり、カスタマーサポートやデバッグだったり、制作進行だったり、様々な人達がそこに当てはまる。
勿論一部のファンやユーザー上に挙げた役職を評価してくれていることは知っているけど、大半はそもそもそんな人知らないで終わり。
批評を受ける壇にすら立ってないわけだ。
でも彼らがやっていることは間違いなく、クリエイティブだと断言できる。
音響さんが効果をつけて編集する。これは立派な創造だ。
エンジニアが緻密なプログラムを書く。これもまた立派な創造だ。
制作進行が個が濃縮された作品たちを、一つの作品へとまとめあげる。これも立派な創造。
デバッガーが幾万の反復操作によって、作品を完全な状態に仕立て上げる。これも立派な創造。
これらを担当する人たちの影の功績が、いわゆるアーティストに負けないぐらい喧伝されるべきとは言わない。
ただ、こういう風に、何かの媒体から発信・主張してもらえたというのは素晴らしいことだと思う。
数年のディレクター経験が反映されていない
ネタバレ無しの感想の方でも語ったけど、残念だなーと思ったのが、主人公の管理能力の件。
終盤ではエロゲディレクターらしい、実写作品でスチルを使い、ムービーを仕上げるという手法で、圧倒的な問題解決能力を魅せた主人公だけど、物語中盤ではディレクター未経験者のような物言いがあったように思えた。
10年の遡行や、他媒体である映像制作の制作進行というのが要因なのかもしれないけど、ちょっとあからさまだなぁと思ったのは否めない。
ハートに火がつけば、覚醒して、恐るべき問題解決能力を見せるという見せ場を作るために、そこまで敢えて無能に見せていたという印象を受けた。
続巻でこの疑問は払拭されるかもしれないけど、現時点ではここがなぁ……という感じ。
まぁ、それを言ったら、最初にかなりコメディっぽく脚色しているとはいえ、主人公が所属していたメーカーの社長が既にファンタジーだけどもw
あんな社長の会社、誰でも一瞬で辞めるでしょうね。
総評
まぁそんな感じで数点残念だなーと思う部分や、疑問に思う部分(特に社長)はあるけれど、次が期待できる作品の一つとして、今後の展開に期待しているのは事実。
キャラとしては、ラノベには、女教師は名言メーカーの法則があるように思っているので、美早紀先生には多大な期待を寄せてます。
奈々子ちゃんに関しては、見事に作者の狙いに乗せられていると言われても、推します。
主人公が、10年後の自分にとても後悔していて、かつての自分のようにならないようにしようとする行動力にはとても好感を持っています。すごく人間らしい魅力がある。
後、英子ちゃんのチームとの共同制作も期待。
英子ちゃんチームのやる気無い三名がリタイアして、画が志野亜貴、演者・歌が奈々子、脚本が貫之、進行が主人公、英子ちゃんが監督で何か作品を作るのかな? 何にしろ大きく絡んできそうな予感があって良い。
以上、『僕たちのリメイク』の書評でした。
……14歳とイラストレーターといい、「あの」MF文庫Jが、萌え過多な作品より、純粋に面白い作品を連発してる事実にビビってるのは僕だけじゃないよね?